最近は女性の抜け毛や薄毛でお悩みを持たれる方も多く、2021年に行われたある製薬会社の市場調査では20代〜60代の女性1万人のうち、6割(57.8%)が髪や頭皮の「悩みがある」という結果が出ていることからも、もはや薄毛や抜け毛の悩みは男性だけの物ではありません。
また、髪は女性の命とも言われるように、特に女性の薄毛や抜け毛の悩みは時としてトップのボリュームやハリ艶がなくなると、人の目が気になって内向的になってしまう程にストレスを抱えて思いつめてしまう女性も中にはいらっしゃいます。
女性の薄毛や抜け毛は、男性のように原因がある程度限定的なものではなく、さまざまな要因が重なって毛髪が細くなり、頭皮が透けて見えるようになってしまうケースがほとんどで、その治療法も多種多様で男性の薄毛よりも治療が難しいケースが多いとされています。
また、実際に2010年頃までは女性の脱毛症をFAGA(女性型男性型脱毛症)と記していましたが、女性の薄毛に関して研究が進むにつれてFAGA(女性型男性型脱毛症)だけでは病態の違いが説明できなくなってしまったため、FPHL(female pattern hair loss)女性型脱毛症という新しい概念が生まれ、女性の薄毛の原因や症状、そして治療法は非常に複雑化しています。
FPHL(female pattern hair loss)について詳しくはこちらをご覧ください。
今回は女性の薄毛や抜け毛の種類や原因、治療法などの対策について詳しく解説していきます。
目次
女性の薄毛や抜け毛の原因
まず、女性の抜け毛や薄毛を誘発する原因として下記の様な6つの原因が考えられます。
- 加齢
- 女性ホルモンの低下(びまん性脱毛症)
- 脱毛を伴う疾患の発症
- 頭皮環境の悪化
- 薬剤(化学療法薬)の影響
- 外傷
- ストレス(栄養失調や精神的ストレス、喫煙など)
男女に共通している抜け毛や薄毛の原因ものあれば、女性特有の原因もあり、男性の抜け毛や薄毛の症状に比べ女性の薄毛になる原因は非常に幅広く複雑とされます。その中でも特に女性の薄毛や抜け毛の原因として割合の多い「女性ホルモンの減少」に関して、更に深堀して解説します。
女性ホルモンとは
女性ホルモンは思春期から20、30代にかけて分泌が盛んなホルモンで40代以降はその分泌量が減少していきます。この女性ホルモンの役割は、生殖器官を発育、維持させる働き、また女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を潤いやツヤを出すといった女性らしさをつくる役割です。この女性ホルモンは様々な理由で分泌量が増減し、それによって毛髪の成長に密接影響を及ぼします。
なお、女性ホルモンにはエストロゲンという卵胞ホルモンと、プロゲステロンという黄体ホルモンの2種類があり、どちらも毛髪に関係しているホルモンで、この2種類の女性ホルモンの何れか、もしくは両方が何かしらの原因で減少すると、抜け毛の量が増えて頭皮が透けて見えるようになってしまい薄毛の症状が進みます。
エストロゲン
卵胞ホルモンのエストロゲンは、髪の毛のツヤや肌のうるおいなど女性らしい体つきに影響しており、別名美人ホルモンとも言われています。髪の毛の成長を促す作用もあると言われており、分泌量が減少すると、毛髪が正常に成長できるのを妨げてしまうのです。
プロゲステロン
黄体ホルモンであるプロゲステロンは、別名母のホルモンと言われています。妊娠を助けたり、赤ちゃんが胎内で育ちやすいように子宮内膜を整える作用のあるホルモンで、妊娠している時のみ分泌量は増える女性ホルモンで、出産が終わると分泌が停止します。
女性ホルモン量の減少の原因とは
では女性ホルモンが減少する原因はどの様な物なのでしょうか、その具体的なケースを紹介します。
- 年齢による減少
- ストレス
- 睡眠不足
- 過度なダイエット
- 運動不足
- 不規則な生活
- 生理周期
月経や老化などといった抗えない生理現象の他にも、ストレスや睡眠不足の影響で分泌量が大きく減少してしまうケースもあり、女性ホルモンの分泌量は非常に繊細に体内で調整及び分泌がされています。
女性ホルモン減少よる女性の薄毛の症状
女性ホルモンの減少で起こる脱毛症には、びまん性脱毛症や分娩後脱毛症などが考えられます。それぞれの脱毛症について解説していきましょう。
1:びまん性脱毛症
びまん性脱毛症は、頭部全体の毛髪が細くなることで頭皮が透けて見えてしまい、30代~40代の女性に多い脱毛症です。びまん性脱毛症は加齢による脱毛の他、体内のホルモンの状態や休止期脱毛の3つのパターンの何れか、または単独で発症して頭髪が脱毛する特徴があります。
びまん性脱毛症について詳しくはこちらをご覧ください。
2:FAGA(女性男性型脱毛症)
女性体内の男性ホルモンと女性ホルモンの拮抗が加齢などの影響で崩れることで、髪が薄くなる女性の薄毛の症状の1つです。男性ホルモンが5αリダクターゼと結合してDHT(ジヒドロテストステロン)へと変換、そしてDHTが毛乳頭細胞に脱毛指令を出して抜け毛が増えることが原因です。
FAGA(女性男性型脱毛症)について詳しくはこちらをご覧ください。
3:産後脱毛(分娩後脱毛症)
いわゆる産後脱毛と呼ばれる脱毛症で、妊娠中に増えていた女性ホルモンが一気に正常量に減少することで、抜け毛が増える症状です。女性が妊娠すると、女性ホルモンである「エストロゲン」と「プロゲステロン」の量が徐々に増え、妊娠後期では胎盤からも分泌するため、妊娠前と比較すると分泌量が増えています。
プロゲステロンにはヘアサイクルにおける成長期の期間を保つ(延長)する役割をしているので、分泌量が増えている妊娠中は抜け毛がほとんどありません。
しかし出産後、増量していたプロゲステロンは4週間以上ほぼ0になり、妊娠期間中に維持されていた成長期中の毛髪が、一気に休止期へと移行することで、一時的に抜け毛が増えてしまうのが、分娩後脱毛症です。
産後脱毛(分娩後脱毛症)について詳しくはこちらをご覧ください。
女性ホルモン減少以外よる女性の薄毛の症状
びまん性脱毛症や分娩後脱毛症は、女性ホルモンが減少することで起きる脱毛症であると説明してきましたが、この他にも、女性が発症する可能性のある脱毛症が下記となります。
- 円形脱毛症
- 真菌感染症(頭部白癬)
- 抜毛症
- 牽引性脱毛症
- 瘢痕性脱毛症
では順にどの様な女性の薄毛の症状なのかを詳しく解説していきます。
1:円形脱毛症
10円玉から500円玉硬貨程度の面積の大きさで脱毛する症状で、頭部のどの部分でも発症します。長期間で徐々に脱毛するFAGA(女性男性型脱毛症)とは異なり、短期間で急激に脱毛するのが特徴です。脱毛している部分としていない部分の境界が明瞭で、瘢痕(はんこん 傷跡のようなもの)がありません。
円形脱毛症について詳しくはこちらをご覧ください。
2:真菌感染症(頭部白癬)
皮膚糸状菌とよばれる真菌(カビ)の一種が髪の毛に感染し、うろこ状の発疹が頭部に現れます。皮膚糸状菌症は「しらくも」とも呼ばれており、代表的なものは足で感染した場合に起きる水虫です。感染した患部は毛髪が折れやすく、また抜けやすい状態でもあります。
3:抜毛症
自分のまつ毛や髪の毛を目立つほど自分で抜いてしまう病気で、強迫性の一種です。「毛を抜きたい」という衝動が抑えきれず、毛を抜く前には緊張感が高まっている状態で、毛を抜くと解放感や快感があるといわれています。
抜毛症について詳しくはこちらをご覧ください。
4:牽引性脱毛症
毛髪を長期間強い力で引っ張ることで起き、女性や髪の長い男性に起きやすい脱毛症です。髪を結い上げることで頭皮の血行が悪くなり、束ねる髪のボリュームが減ったり切れ毛が目立ったりするようになります。
牽引性脱毛症について詳しくはこちらをご覧ください。
5:瘢痕性脱毛症
瘢痕(はんこん)性脱毛症は何かしらの原因によって毛を包んでいる器官である「毛包」が破壊され、傷跡のようになってしまい毛髪が生えてこなくなってしまう病気です。毛包は毛を産出する器官ですので、それがなくなってしまうと、ヒトは毛髪を生み出すことができません。
他にもさまざまな原因で脱毛を伴う疾患になる可能性もあり、女性の薄毛は原因の特定が難しいです。しかし原因を特定し、正しい対処をすれば、改善する近道になるでしょう。
抜け毛や薄毛の原因は女性ホルモンだけではない
女性の薄毛には女性ホルモンが関係する原因が多いのは事実ですが、女性ホルモンだけに注意すべきではありません。
- 過度なダイエット
- 運動不足
- 睡眠不足
- 喫煙
- ストレス
女性ホルモンの減少だけではなく、過度なダイエットによる栄養不足で頭皮に栄養がいかなかったり、睡眠不足で成長ホルモンが分泌されずに毛髪が正常に成長できなかったりなど、気を付けるべき点は他にもあるからです。
生活習慣から見直す薄毛の対策や予防法について詳しくはこちらをご覧ください。
女性の抜け毛や薄毛の治療と治療薬
まず、ご自身でヘアケアを行う際に注意していただきたいのが、男性用の発毛薬や発毛剤を使用しないことです。男性と女性の薄毛は原因が異なる場合が多く、仮に男性がAGA(男性型脱毛症)で女性もFAGA(女性男性型脱毛症)と、症状が似通っていたとしても、同じ治療薬を使用できません。
男性の発毛薬には「フィナステリド」や「デュタステリド」など、女性が触れることも禁忌とされる治療薬があり、女性の薄毛治療の際に使用される治療薬は異なります。
では女性の薄毛治療に有効とされる代表的な治療薬を解説していきます。
スピロノラクトン
スピロノラクトンは、本来利尿作用による高血圧治療薬ですが、現在は多くの病院で女性の薄毛治療にも使用されている薬です。ジヒドロテストステロン(悪玉男性ホルモン)の男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)への結合を阻害し、抗男性ホルモン作用を持つため、女性の脱毛症の1つであるFAGA治療に有効とされています。
スピロノラクトンについて詳しくはこちらをご覧ください。
パントガール
びまん性脱毛症に有効な成分を多く含有まれており、毛髪に良いとされる成分ももちろんのこと、健康維持に必要なビタミンB1、毛髪を形成する際に必要なケラチンを構成するL-シスチンなどが配合されています。女性の髪の成長を促したり、女性のホルモンバランスや体調を整えることで毛髪の成長を正常化する効果があります。
パントガールについて詳しくはこちらをご覧ください。
ミノキシジル外用薬
髪の成長因子の分泌を促し髪の発毛を促す薬で、発毛剤という名称で薬局などでも販売されています。「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」においても、ミノキシジル外用薬は推奨度A(行うよう強く勧める)られており、多くの病院で女性の薄毛治療に用いられている薬です。
ミノキシジル外用薬について詳しくはこちらをご覧ください。
女性の薄毛治療は一人で悩まずに医療機関へ相談しましょう
女性の薄毛には突発性の脱毛や、女性ホルモンが減少によって起こる脱毛など多岐にわたります。また、複数の原因が複雑にからみ合って抜け毛や薄毛の症状が出ている場合も多いです。その為、個人の判断で原因の特定しようとすると、間違ったヘアケアや治療を行いかねません。
その場合にはお金や時間を無駄にしてしまう可能性や、最悪良くなったかもしれない症状が悪化し、その後の医療機関での薄毛治療に時間がかかる可能性も出てきてしまいます。特に女性と男性との薄毛は、仮に症状が似ていても治療法や治療薬がまったく異なる為、医療機関へ相談することをおすすめします。
銀座総合美容クリニックでは「常に患者さん目線でのクリニック運営」「患者満足度のより高いAGAクリニックを目指す」をクリニックの運営理念に掲げ薄毛に悩む患者様と日々真摯に向き合っており、女性の抜け毛や薄毛の悩みについても治療をお受けしております。