進行性の脱毛症であるAGA(男性型脱毛症)。そんなAGAには有効な治療薬が存在することをご存知でしょうか?内服薬「デュタステリド」はAGAに対する効果が証明されている治療薬の一種であり、AGA治療にデュタステリドを使用している方も多く存在します。今回は、AGAに対して効果が証明されている内服薬デュタステリドについて紹介します。
目次
デュタステリドとは
AGA治療薬として処方されているデュタステリドは、元々「アボルブ」という製品名で前立腺肥大症の治療薬として処方されていた経緯をもっています。前立腺肥大症とは、前立腺が肥大化することにより尿道や膀胱が圧迫され、さまざまな排尿障害が起きる疾患です。
デュタステリドは、治療の過程でAGA罹患者に対して先発薬であるフィナステリドと同様の効果が認められたため、AGA治療薬として開発・承認されました。デュタステリドはフィナステリドやミノキシジル外用薬と同様に厚生労働省の認可を受けている治療薬です。
2015年の販売承認を機に、国内では「ザガーロ」という製品名でカプセル状の薬剤「0.2mg」と「0.5mg」の2種類が専門のクリニックなどで処方されています。デュタステリドは、体内に存在する特定の酵素を阻害することでAGAの進行を抑制することができます。ではAGAに対する具体的な作用についてみていきましょう。
デュタステリドの作用機序
デュタステリドの作用を説明するためには、AGAのメカニズムに触れておく必要があります。
AGAの基本的なメカニズム
髪の毛には「ヘアサイクル」と呼ばれる一定の周期が存在しており、正常な状態の髪の毛は、ヘアサイクルによって発毛・成長・退行を繰り返しています。このヘアサイクルは一生で繰り返される回数が決まっており、髪の毛はヘアサイクルにより生え変わる事で健康を保っています。
AGAは男性ホルモンの「DHT(ジヒドロテストステロン)」が原因で発症します。DHTは男性ホルモンの一種である「テストステロン」が、還元酵素である「5αリダクターゼ(5α還元酵素)」の影響を受け変化し生成されます。 生成されたDHTが男性ホルモン受容体と結合することでAGAが発症します。DHTは、主に前頭部や頭頂部などの髪の毛に対して成長を妨ぐように作用します。その結果、髪の毛のヘアサイクルは乱され、細く弱い状態へ変化し薄毛へと繋がっていきます。
AGAのメカニズムについてはこちらの記事で詳しく説明しています。
関連:AGAの仕組みとは?原因から治療法まで解説
デュタステリドの作用
デュタステリドが直接作用するのは「5αリダクターゼ(5α還元酵素)」と呼ばれる還元酵素です。
AGAの原因となる男性ホルモンDHTは、5αリダクターゼの影響を受け生成されるため、デュタステリドは、この酵素を阻害することでAGA抑制に成功しています。5αリダクターゼには「I型」と「II型」があり、デュタステリドはどちらに対しても阻害効果が認められています。
同じ5α還元酵素阻害薬には先行薬であるフィナステリドがあります。AGAに対する作用機序は似ていますが、フィナステリドが「II型」の5αリダクターゼのみに作用することに対して、デュタステリドはどちらにも作用することがわかっているため、フィナステリド以上の効果を期待出来ます。
デュタステリドの効果
AGAに対するデュタステリドの効果に関する信憑性のあるデータは、日本皮膚科学会が発行する「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」内に記載されています。
917名の男性被験者を対象としたデュタステリド0.5mg/日とフィナステリド1mg/日を用いた観察期間6ヵ月のランダム化国際臨床比較試験において、全毛髪数と毛直径の増加に関して、デュタステリドはフィナステリドより優れた効果を示しました。頭部の写真評価においてもデュタステリドの優位性が示されています。
また、国内で実施されたデュタステリド0.5mg/日を用いた120名の男性被験者に対する観察期間52週間の非ランダム化試験において、非軟毛直径が52週で増加しました。皮膚科医による頭部の写真評価では、26週、52週で優位に毛量が増加しました。
この結果を受け、ガイドラインでは男性型脱毛症に対するデュタステリド内服の発毛効果に関して、“高い水準の根拠があるので内服療法を行うよう強く勧める”と結論づけています。
参考:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
デュタステリドの服用期間
まず、AGA治療の効果に即効性はありません。治療薬の服用に関しては一定期間の服用継続が必要になります。ガイドライン記載の臨床試験は約半年間行われています。
また、AGA治療薬ザガーロ(有効成分デュタステリド)の添付文書には、“投与開始後12週間で改善が認められる場合もあるが、治療効果を評価するためには、通常6ヵ月間の治療が必要である”と記載されています。
効果には個人差があり、3ヵ月程度で効果を実感できる方もいるようですが、一般的には半年間の服用が必要でしょう。
デュタステリドの服用方法と注意点
成人男性の場合、通常はデュタステリドの0.1mgを1日1回経口投与します。なお、必要に応じて0.5mgを1日1回経口投与します。
口腔内や咽頭の粘膜を刺激することがあります。カプセルは噛んだり、開けたりせずに飲み込みましょう。服用のタイミングは問いません。服用を忘れないためには、毎日規則正しい時間帯での服用がおすすめです。
禁忌事項
デュタステリドは誰でも服用できるわけではりません。以下の条件に該当する方の服用は禁忌とされています。
●未成年者(20歳未満):デュタステリドは20歳未満に対する安全性が確立されていないため、未成年の服用はできません。
●女性:女性も未成年同様、服用することはできません。また、授乳中の女性は薬に触れることも禁忌とされています。デュタステリドには「経皮吸収」されるという特徴があり、実験の結果から男児の外生殖器の発達を阻害する可能性が示唆されたためです。
●過敏症の方:デュタステリドの成分及び他の5α還元酵素阻害薬に対して過敏症(薬物に対する免疫介在性の反応。 症状は軽度から重度まで様々で、発疹やアナフィラキシーなどがある)の既往歴のある方は服用できません。
●肝機能障害がある方:デュタステリドは主に肝臓で代謝されるため、血中濃度の上昇など肝機能に何らかの影響を及ぼす可能性がある方は服用できません。
デュタステリドの副作用
薬には必ず何らかの副作用が存在します。デュタステリドを服用する上で、発症の可能性がある副作用を紹介します。
国内外で行われた臨床試験における主な副作用は以下の通りです。
国際共同試験総症例557例(日本人120例を含む) | 日本人120例 | 国内長期投与試験総症例120例 | |
副作用の合計 | 95例(17.1%) | 14例(11.7%) | 20例(16.7%) |
勃起不全 | 24例(4.3%) | 6例(5.0%) | 13例(10.8%) |
リビドー減退 | 22例(3.9%) | 7例(5.8%) | 10例(8.3%) |
射精障害 | 2例(1.7%) | 5例(4.2%) | |
精液量減少 | 7例(1.3%) |
デュタステリドの重大な副作用
デュタステリドの重大な副作用には、以下のような症状が見られます。
フィナステリドよりも半減期(※1)が長いため、体内に残る時間も長くなり、副作用が発現しやすいため、注意しましょう。
※1 代謝や排泄などで治療薬の物質が半分に減るまでに要する時間
肝機能障害
文字通り、何らかの原因により肝臓の機能が障害されている状態です。多くの場合、血液の肝機能検査で異常値を示している場合に肝機能障害と呼ばれます。
治療薬を服用することによって肝臓に多少なりとも負担がかかることは事実です。デュタステリド服用によって肝機能障害が起こる可能性は非常に低いですが、万が一、体調に異変を感じた場合は服用を中止し医師に相談しましょう。
黄疸
全身の皮膚や粘膜に黄色の色素が沈着し、だるさや痒みを伴うこともある状態をいいます。一般的には眼球結膜(しろめ)に症状が現れることが多いようです。
黄疸は何らかの病気の影響によって起こることがあるため、黄疸の症状を確認した場合は検査が必要です。
その他の副作用
1~5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 | |
過敏症 | 発疹 | 蕁麻疹、アレルギー反応、そう痒症、限局性浮腫、血管浮腫 | |
精神神経系 | 頭痛、抑うつ気分 | 浮動性めまい、味覚異常 | |
生殖系および乳房障害 | 性機能不全(リビドー減退、勃起不全、射精障害) | 乳房障害(女性化乳房、乳頭痛、乳房痛、乳房不快感) | 精巣痛、精巣腫脹 |
皮膚 | 脱毛症(主に体毛脱落)、多毛症 | ||
消化器 | 腹部不快感 | 腹痛、下痢 | |
その他 | 倦怠感、血中クレアチンホスホキナーゼ増加 |
デュタステリドのジェネリック薬
ジェネリック医薬品(後発薬)とは、厚生労働省の認可を得た医薬品です。先発薬の特許期間満了後に発売され、先発薬と同じ有効成分を含有する医薬品のことを指します。
新薬(先発薬)を開発するためには多大な開発投資が必要です。そのため、投資費用の回収と新たな開発投資のために特許権が存在しています。先発薬に認められているこの権利により、特許期間中は他の製薬会社から類似品は発売できません。
しかし、特許期間には期限があり、特許期間の満了に伴い他社からの類似品発売が解禁されます。デュタステリド (製品名ザガーロ)は、2016年にザガーロを発売したグラクソ・スミスクライン社が保有していましたが、2020年10月に国内での特許期間が満了しました。その為、それ以降に様々な製薬会社が後発薬であるジェネリック薬を販売し始め、2024年現在は12社の製薬会社から発売されています。今回はその一部を紹介します。
薬品名 | メーカー | 処方量 |
デュタステリドカプセル0.5mgZA「トーワ」 | 東和薬品 | 0.5mg |
デュタステリドカプセル0.5mgZA「サワイ」 | 沢井製薬 | 0.5mg |
デュタステリドカプセル0.5mgZA「YD」 | 陽進堂 | 0.5mg |
デュタステリドカプセル0.5mgZA「SN」 | シオノケミカル | 0.5mg |
デュタステリド錠0.5mgZA「NS」 | 日新製薬 | 0.5mg |
デュタステリド錠0.5mgZA「FCI」 | 富士化学工業 | 0.5mg |
先発品の「ザガーロ」の剤型はソフトカプセルですが、デュタステリドのジェネリック薬品の中には剤型が異なり錠剤の物も販売されています。
デュタステリドの入手方法
デュタステリドを入手するための方法は大きく分けて2つ存在します。
病院や専門のクリニックでの処方
デュタステリドを入手したい場合はAGA治療専門のクリニックを受診しましょう。デュタステリドは薄毛治療における代表的な治療薬です。専門のクリニックであれば取り扱っていない医院は少ないでしょう。
また、デュタステリドは厚生労働省から認可を受けている薬剤です。最近では一般病院の皮膚科でも取り扱っている場合があります。気になる方は公式サイトや電話などで確認してみることをおすすめします。
個人輸入
病院やクリニックを介さず、通販サイトや輸入代理店経由で海外から購入する方法です。個人輸入では、国内相場よりも安価で治療薬を購入できる場合もあるため、一定の需要があります。
しかし、個人輸入にはリスクも存在します。国内の病院やクリニックと違い、入手ルートが不透明なことも多く、偽薬や粗悪品が混入されている可能性もあります。 また、個人輸入で購入した治療薬を服用し、万が一、重篤な副作用が発生した場合でもすべて自己責任になってしまうのです。 個人輸入で治療薬を入手することは可能ですが、リスクが伴うため、専門のクリニックや病院で医師の診察を受け、安全に服用することをおすすめします。
なお、国内で認可されているデュタステリドの剤形は、長楕円形の軟カプセル(外側は軟カプセルで中身の薬剤は液体)です。しかしながら、個人輸入した際の一部のデュタステリドの剤形は固形や散財(粉末)の場合もあり、剤形が大きく異なります。その為、それらの薬剤が本来のデュタステリドの効果があるかに疑義のある物が存在します。また、時としてそのように疑義のある固形や散財(粉末)の剤形のデュタステリドが国内のAGAクリニックでも処方されているケースがありますので、国内で処方を受ける際も注意が必要です。唯一国内で認可されている先発のデュタステリドの剤形は、長楕円形の軟カプセルであることを把握しておくことが重要です。
銀座総合美容クリニックでは「常に患者さん目線でのクリニック運営」「患者満足度のより高いAGAクリニックを目指す」をクリニックの運営理念に掲げ薄毛に悩む患者様と日々真摯に向き合っており、無料カウンセリングを対面・オンラインともに常時承っております。
デュタステリドに関してよくある質問
デュタステリドに関してよくある質問をまとめました。