皆さんもどこかで「毎日帽子を被ると薄毛になる」「ヘルメットをかぶると頭皮に良くない」「AGA治療を開始したら帽子は被れない」など、帽子やヘルメットなどの被り物と薄毛にまつわるエピソードを1回は耳にしたことがあるかと思います。
そこで今回は、薄毛とヘルメットなどを含めた帽子との関係性があるのか、また帽子が頭皮にどのような影響があるのかといった点を医学的な見地から解説いたします。
目次
「帽子を被るとハゲる」の信憑性について
まず結論から申し上げると、「帽子は薄毛に直接的な原因は無いが、特定の条件下で遠因(間接的な原因)になる可能性がある」というのが医学的に考える正しい情報です。
特に男性の大半の薄毛の要因といわれるAGA(男性型脱毛症)については、体内の男性ホルモンに起因する為、帽子とは一切の因果関係はありません。
AGA(男性型脱毛症)について詳しくはこちらをご覧ください。
関連: AGAの原因や治療法とは?薄毛になるメカニズムを徹底解説
しかし、AGA(男性型脱毛症)以外の一部の脱毛症において、帽子を被り続けることで、一定の条件を満たしてしまうと、頭皮環境が悪化し薄毛が進行する可能性があることは事実です。頭皮環境が悪くなれば、太く長い毛髪に成長することができません。そうなると、頭皮を覆う毛髪が細く短い状態になってしまい、十分に頭皮を覆うことができず露出する場合があります。
その為、「帽子は薄毛に直接的な原因は無いが、特定の条件下で遠因(間接的な原因)になる可能性がある」という結論に至ります。ではその詳細を解説していきます。
頭皮環境が悪化する帽子の着用方法とは
帽子を被っても、直接薄毛に関係するようなことにはなりませんが、いくつかの環境で頭皮の状況が悪化して抜け毛が増えてしまうことがあります。間接的ではありますが、「帽子を被る=薄毛になる」と言われる理由は3つ考えられます。
- 帽子を長時間被りっぱなしにすることで頭皮の血行が悪くなる
- 夏場での帽子の着用で汗などの湿気により常在菌が増えて頭皮環境が悪くなる
- サイズの合わない帽子の着脱によって起こる摩擦で牽引されて頭皮にダメージが起きる
では、それぞれどの様な帽子の着用条件が頭皮に悪影響を及ぼすか詳しく解説します。
帽子の長時間の着用で頭皮の血行を悪化
帽子やヘルメットを着用することは、何も着用していない時と比べて頭皮を圧迫している状態です。それが長時間に及ぶと、頭皮が血行不良になり酸素や栄養を運びにくい状態になります。それが短時間であれば影響はありませんが、連続的に長時間続く場合には、頭皮ひいては毛髪にとって良い環境であるとは言えません。頭皮に酸素が栄養が運びにくい状態が続くと、毛髪が成長するのに必要な栄養や酸素が足りなくなり、太く長い毛髪に成長できなくなります。
夏場の帽子着用で頭皮の常在菌増加による頭皮環境の悪化
ヒトの皮膚には皮膚を健康に保つ役割をする多くの常在菌がおり、その数は数百億に上るとも。頭皮は皮脂を分泌して膜を作り、乾燥から身を守っていますが、その皮脂の分泌が多くなると、常在菌のバランスが崩れてしまいます。常在菌は皮脂を餌に繁殖して活動が活発になると、炎症を起こしてしまい、それが頭皮で起こると鱗屑※1が出現する「脂漏性皮膚炎」を発症することがあります。それが悪化することで頭髪の脱毛が起こる場合もあります。
※1 鱗屑:りんせつ、皮膚の表面の角質細胞が細かくはがれ落ちたもので、頭部でみられるものはフケと呼ばれる
脂漏性皮膚炎について詳しくはこちらをご覧ください。
紫外線を避けて帽子を被ること自体は非常に良いことですが、特に夏場は日陰や室内に入った際などは速やかに帽子を脱いで頭皮を蒸れない状態にすること、そして洗髪を毎日行い常に頭皮を清潔な状態に保ちましょう。
サイズの合わない帽子の着用で毛髪の牽引による毛髪へのダメージ
帽子を被ると、頭皮を圧迫するだけではなく毛髪も一定方向に押さえつけられる状態が続きます。短時間であれば問題ありませんが、連続的に長時間その様な環境になると、頭皮にダメージが蓄積し、抜け毛が増える脱毛症になる可能性が高くなるでしょう。これは「牽引性脱毛症」と呼ばれる脱毛症で、多くは女性がポニーテールなどで引き起こします。しかし帽子やヘルメットなどを長期間着用することで、帽子の被り方によっては頭皮に負荷がかかった状態になるため、男性でも牽引性脱毛症になることもあります。
牽引性脱毛症について詳しくはこちらをご覧ください。
帽子の頭髪に対してのメリット
帽子を被ることで一定の条件を満たすと、頭皮の状態が悪くなるとお伝えしていますが、帽子を被ることは頭皮を守ることでもあるため、一概に「帽子は頭皮に良くないのでやめましょう」という訳ではありません。今度は逆に帽子のメリットをピックアップして解説します。
メリット1:紫外線から頭皮を守る
帽子の最大の役割として、頭皮を紫外線から守る役割を果たします。紫外線を受けた肌はシワやシミ、たるみなどを引き起こします。頭皮も顔と同様に起こりえる症状で、特に毛髪を支える器官のある毛包が存在する真皮にまで影響を与えるため、紫外線に対して何も対策をしないのは危険です。
紫外線と薄毛の関係性について詳しくはこちらをご覧ください。
頭皮は人体の中でも最も高い位置にあるため、紫外線の影響を受けやすいです。帽子を被ることは紫外線を防ぐ効果的な方法ですので、日中陽に当たる場合は季節を問わず着用するようにしましょう。
メリット2:冬場では寒さや乾燥対策になる
気温の低い冬場では頭皮の温度も低くなり、頭皮から分泌された皮脂がバリア機能を果たしにくい状態になることがあります。毛穴から分泌された液状の皮脂は、毛髪を伝って潤うことで乾燥から毛髪や頭皮を守ります。しかし冬場は気温が低いため、毛髪に行き渡らずに頭皮に残りがちです。
また、身体や頭皮が冷えることによって、体内の血液が老廃物や脂分などで血流が悪くなります。ヒトの身体は生命活動を行っている臓器から優先的に栄養を運び込むため、毛髪への栄養は後回しになりがちです。ニット生地の帽子に限りませんが、帽子を被って外気温をある程度遮断し、頭皮の体温低下が少しでも緩和されるようにしましょう。
薄毛にならない帽子の被り方
帽子を被ることによる頭皮への悪影響のケース、逆に頭皮を寒さや乾燥、紫外線対策をする上で非常に効果的な方法であることなど、そのメリットとデメリットを解説していきしたが、では実際どの様に頭皮にダメージがない様に帽子選んだり、を被れば良いのでしょうか。具体的なポイントを解説します。
帽子のサイズにはゆとりをもつ
風邪で飛ばされないようにと、サイズの小さいものや留め具をきつく結んでいるような方は、頭皮の血流を悪くしている可能性があります。着用する際にはサイズにゆとりを持つようにしましょう。
帽子の長時間の着用は避ける
どうしても帽子やヘルメットを1日中着用しなければならない方もいらっしゃると思いますが、長時間着用し続けると頭皮の圧迫で血流も悪くなりますし、汗をかいて放置してしまうと脂漏性皮膚炎になる可能性もあります。着用時間が長くなる時は、こまめに脱いで適時髪の分け目を変えるなど髪と頭皮に負担が掛からない様に気を付けましょう。
頭皮を清潔に保つ
帽子をかぶる人は、かぶらない人と比較してみると、頭皮の環境が悪化しやすいことは事実です。どうしても帽子で毛髪を押しつぶしますし、頭皮は蒸れてしまいます。頭皮が蒸れると皮脂を餌にして常在菌が異常繁殖して、頭皮の環境が悪化します。帽子を被って汗を書いたら、汗をふき取り頭皮を清潔な状態に保ちましょう。
頭皮環境が悪化しない条件で、帽子を被って守りましょう
仕事上、どうしても帽子やヘルメットを被らなければならず、頭皮の状態を懸念される方も多いかもしれません。そんな中で薄毛が気になっているという方は、頭皮の環境が悪くなってしまったことで抜け毛が増えている可能性があります。
他にも男性の場合、男性ホルモンが原因で抜け毛が増えてしまう進行性の脱毛症(男性型脱毛症)を発症している可能性も考えられるため、抜け毛や頭皮の状況で心配があるのであれば、まずは医療機関に相談してみましょう。