プロペシアは日本の現代医療において最もAGAに対して効果のある治療薬の1つとされ、「フィナステリド」を主成分とする内服薬(飲み薬)です。AGAの原因となるジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑制してヘアサイクルを正常化させることで、AGAによる抜け毛の増加や薄毛の進行を抑制する効果が期待で出来る薬です。
AGA(男性型脱毛症)のメカニズムについて詳しくはこちらをご覧ください。
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このプロペシア(フィナステリド)がAGAに対してどの様なメカニズムでアプローチし効果を発揮するのか、また副作用はどの様な症状があるのかを詳しく説明をしていきます。
目次
プロペシアとは
プロペシアとは、MSD製薬(旧:万有製薬)により2005年より日本国内初のAGA治療薬として認可を受け「プロペシア錠0.2mg」と「プロペシア錠1mg」の2種類の内服薬として販売を開始した薬です。
なお、本ページではプロペシア(フィナステリド)と並列して名前を記載していますが、これらの名称には明確な違いがあり「プロペシア」は薬の商品の名称であり「フィナステリド」は薬の有効成分の名称です。
MSD製薬(旧:万有製薬)から販売されているプロペシアの薬剤の剤形は円形でピンク色に近い薄い赤色をしており、直径7.2mm、厚さ3.5mmの錠剤で、PTP包装で28錠入りと140錠入りの2種類の処方単位で販売されています。また、プロペシアは皮膚科やAGAクリニックなどで処方を受けることが出来ますが、どこの医療機関で処方を受けたとしても健康保険適用外となり治療費は全額自費です。
なお、MSD製薬は2011年頃に、タレントの爆笑問題を起用して「お医者さんに相談だ」といったCMを放映し、AGAという言葉を日本で普及させる啓蒙活動もしていた製薬会社でもあります。現在はラバーガールを起用してAGAの啓蒙を実施しています。
主成分のフィナステリドとは
プロペシアの主成分であるフィナステリドは最初からAGA治療薬として開発された訳ではなく、1991年よりアメリカメルク社で前立腺肥大症に対して抑制的に作用する治療薬として開発され、1992年にフィナステリド5mg含有の「プロスカー錠」の商品名で米国のFDAに認可を受けました。
後に、プロスカー錠の主成分である「フィナステリド」がAGA(男性型脱毛症)に対し、脱毛を抑制する反応が報告されたことからAGA治療薬として再度検証が行われ、1997年に前立腺肥大症の投与量よりも少ない「1mg」の製剤がAGA治療薬として米国のFDAで認可されたという開発経緯がある薬です。
その後、2005年10月には日本の厚生労働省で認可を受け、「プロペシア」の商品名で国内販売が開始されました。
2006年頃にはフィナステリドは日本を含め世界60ヵ国以上でAGA治療薬として承認され、世界中の男性が薄毛治療薬として用いられている最もポピュラーなAGA治療薬といえます。
プロペシア(フィナステリド)の効果
日本皮膚科学会によりAGA治療における様々な治療法や薬の評価を「A~D」の推奨度に分類した男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版において、プロペシア(フィナステリド)は最も推奨度の高い「A」に分類されています。
日本国内においてAGA治療薬の中で「プロペシア(フィナステリド)」はAGA治療において最も処方を推奨されるべき内服薬の1つであることがこのことから分かります。
ただ、薄毛の症状に悩みを持った男性の場合、全てのケースにおいて「プロペシア(フィナステリド)」を服用すれば良い訳ではありません。薄毛にも様々な種類の原因や症状がありますが、プロペシアはあくまでAGAのみに症状の改善が認められる薬ですので、必ず医師の診察や触診の元で自らの薄毛の症状がAGAであることを確認してからプロペシア(フィナステリド)の治療は開始しましょう。
では、どの程度の効果が認められるかという点については、日本皮膚科学会が公表している臨床試験データを元に説明をしていきます。
プロペシアの主成分であるフィナステリドを用いた414名の「日本人」男性を対象とし、観察期間48週間の試験において、頭頂部においての写真撮影の効果判定では、58%の軽度改善以上の効果があり、引き続き2年、3年間の内服継続で、軽度改善以上の効果は、2年で68%、3年で78%と継続年数が長くなるほど、改善効果は高くなったと示されており、現代医療において最も基本的なAGA治療薬といえるでしょう。
出典:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
*プロペシア錠1㎎での改善効果
プロペシア(フィナステリド)の効果のメカニズム
プロペシアは、5α還元酵素を阻害しAGA(男性型脱毛症)の主な原因物質である「DHT(ジヒドロテストステロン)」の産生を抑制することで、抜け毛と抑制し薄毛の進行を遅らせる効果が期待できます。
DHT(ジヒドロテストステロン)とは、もともとは体内で精巣(睾丸)や一部が副腎で生成されるテストステロン(男性における主要な性ホルモン)というホルモンです。このテストステロンは約95%が精巣、残りの約5%が副腎で生成され、前立腺などの男性生殖組織の発達や筋肉や骨量の増加、体毛の成長などの二次性徴を促進する重要なホルモンです。テストステロンは20代をピークに加齢と共にその分泌量が減少していきます。
この血液中に含まれる男性ホルモンの代表格である「テストステロン」が毛根周辺にある「5-αリダクターゼ」が結びつき変換され産生されたものが「DHT(ジヒドロテストステロン)」です。
このDHT(ジヒドロテストステロン)が、毛乳頭細胞に存在する男性ホルモンの受容体であるアンドロゲンレセプターと結合することで、ヘアサイクルを乱し本来成長期にある毛髪に対し退行期へ移行する信号が出され、髪の毛が「太く」「長く」成長する期間を徐々に短くすることで「細くて」「短い」状態で抜けてしまう事で薄毛が進行していきます。
プロペシア(フィナステリド)を服用することで、テストステロンと5-αリダクターゼの関与にアプローチし、DHT(ジヒドロテストステロン)の産生を阻害することで、乱れたヘアサイクルを正常化させAGAの進行を抑制します。
プロペシア(フィナステリド)の服薬期間
プロペシアの効果を実感できるまでには、個人差はあるものの連続投与を続けて3~6ヵ月程度の期間を要すると、プロペシア添付文書に記載されています。
また、男性型脱毛症診療ガイドラインによると、3ヵ月の連日投与により効果が発現する場合もありますが、少なくとも6カ月程度は内服を継続し効果を確認すべきであると記されており、服用するのであれば最低でも3~6カ月は必要であることが分かります。
これらのデータから、個人差はありますがプロペシアはまず1カ月前後の短期的な服用で急激に症状が改善される等の効果を実感することが難しく、最低でも3~6ヵ月程度毎日服用することでその効果の実感を得ることが出来ます。
なお、プロペシアはAGAを根治させる薬ではなく、あくまで髪の毛が抜ける症状に対しての対処療法に用いられる薬の為、プロペシア(フィナステリド)服用を止めると個人差はありますがAGA(男性型脱毛症)の進行が再び始まります。
また現代医療においてAGAを根治させる薬は存在していません。
参考:MSD社「プロペシア錠 添付文書」
参考:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」.
プロペシア(フィナステリド)の服薬方法
プロペシアは原則として1日1回就寝前もしくは同じ時間に服用します。
通常0.2mgを1日1回経口投与しますが、必要に応じて投与量を適宜増量することもできますが、1日1mgを上限とし医師の服薬指導の元で調整が必要です。
なぜ、1日1回おなじ時間に服用するかというと、プロペシアに関わらずですが、薬には有効血中濃度という考え方があり、薬の効果が体内で発現する血中濃度帯があります。その血中濃度を一定に保つために1日1回同じ時間に服用することが重要です。
服用の際の注意点
プロペシアは男性におけるAGA(男性型脱毛症)のみの適用であって、円形の脱毛斑が出来る円形脱毛症や皮膚疾患に伴う脱毛に対する適用はありません。
また、20代未満での安全性及び有効性は確立されていないことから、一般的にどのクリニックでもプロペシアの処方はされません。
禁忌
禁忌とはある医薬品を投薬すべきでない患者や状態を指す言葉です。
プロペシアは女性に対する適応はないので、女性に対しての処方はされませんが、妊娠又は、妊娠している可能性のある婦人及び、授乳中の婦人に投与すると、男性ホルモンの低下により男子胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼす恐れがあるとされています。
また服用するだけでなく、皮膚表面から吸収される事で同様の作用が認められる為、薬に触れる事も禁忌とされています通常、処方されるプロペシアは経皮吸収が起きぬようコーティングされているため心配はありませんが、家庭内に未成年の方、女性がいる場合は、薬剤の取り扱いには注意が必要です。
特にプロペシアの錠剤をピルカッターなどで割ることで、意図とせずその粉末が飛散してしまうのでその様な取り扱いも控えましょう。
プロペシア(フィナステリド)の副作用
プロペシアの副作用は、48週間の二重盲検比較試験において、安全性評価対象276例中11例(4.0%)に14件の副作用(臨床検査値以上変動を含む)が認められており、主な症状はリビドー(性欲)減退3例(1.1%)、勃起機能不全2例(0.7%)、肝機能障害2例(0.2%)等と添付文書に示されています。
なお、二重盲検比較試験とはダブルブラインドテストともいい、治験の被験者群をA群とB群に二分し、一方の群には被験薬を、もう一方には対照薬(プラセボなど)を投与して比較するも試験で、どちらのグループにどちらの薬を投与しているかを、医師、患者、スタッフが誰も知らない状態で行う方法で、比較試験として一般的な方法です。
プロペシアやフィナステリドにおいて性欲減退の副作用が注目を浴びるケースがありますが、二重盲検比較試験においては症状の発生が1%程度であることは重要なポイントです。
重大な副作用
プロペシアは肝機能障害(頻度不明)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなどの適切な処置が必要なため、処方を受けた医療機関に必ず相談しましょう。肝機能に不安のある方は必ずプロペシアの服用前に血液検査をしておくことが重要です。
その他の副作用
プロペシアはその他の副作用として以下の様な症状や異常が確認されています。
次の様な症状や異常が現れた場合は、投与を中止するなどの適切な処置が必要な為、処方を受けた医療機関に必ず相談しましょう。
※スマートフォンでご覧の場合はこの表を横にスライドができます。
1~5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 | |
過敏症 | 瘙痒症、蕁麻疹、 発疹、血管浮腫 (口唇、舌、咽 喉及び顔面腫脹 を含む) | ||
生殖器 | リビドー減退 | 勃起機能不 全、射精障 害、精液量 減少 | 睾丸痛、血精液 症、男性不妊症・ 精液の質低下 (精子濃度減少、 無精子症、精子 運動性低下、精 子形態異常等) |
肝臓 | AST(GOT)上 昇、ALT(GPT) 上昇、γ-GTP上昇 | ||
その他 | 乳房圧痛、乳房 肥大、抑うつ症 状、めまい |
参考: MSD株式会社:プロペシア錠0.2mg/ プロペシア錠1mg添付文書,第15版,2018.
プロペシア(フィナステリド)の入手方法
プロペシアにて治療を行うには、医療機関(皮膚科・AGAクリニック)にて薬の処方を受ける必要があります。AGAクリニックでの処方は保険診療の医療機関と同じで、医師が診察を行った上で薬が処方され、基本的には1か月分の薬が処方されます。
稀に3ヶ月分や半年分などとまとめて処方するAGAクリニックもありますが、薬の効果や副作用など、特にAGA治療を初めて行う場合は自分自身でそれらを客観的に判断することが難しい為、毎月医師の診察を元に服薬を開始した方が安全で効果的なAGA治療が可能です。
また、個人輸入により海外製品を通販販売している業者も存在しますが、薬効成分(フィナステリド)が全く含まれていないものや過剰な薬効成分が含まれている、いわゆる偽物が含まれているケースも報告されており、厚生労働省からも注意喚起が促されていますので注意してください。
万が一、副作用が出た場合、国内の処方薬であれば「医療品副作用被害救済制度」が適用され様々な補償にてカバーされますが、海外から個人輸入された未承認薬は一切の対象になりませんので、健康被害が出た場合は、全て自己責任となります。その為、偽物を服用しない為に、医療機関を受診し、医師の処方により正しく服用することを薦めます。
プロペシア(フィナステリド)のジェネリック薬
プロペシアは国内での特許が2015年に切れた為、それ以降に様々な製薬会社がプロペシアの後発薬(ジェネリック薬)を国内で販売しています。2019年現在は約10種類程度のジェネリック医薬品が国内で発売されています。
※スマートフォンでご覧の場合はこの表を横にスライドができます。
薬品名 | メーカー | 処方量 |
フィナステリド錠「ファイザー」 | ファイザー | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「クラシエ」 | 大興製薬 | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「サワイ」 | 沢井製薬 | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「トーワ」 | 東和薬品 | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「SN」 | シオノケミカル | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「TCK」 | 辰巳化学 | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「武田テバ」 | 武田テバファーマ | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「FCI」 | 富士化学工業 | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「RTO」 | リョートーファイン | 0.2mg/1mg |
フィナステリド錠「SKI」 | 小林化工 | 0.2mg/1mg |
ジェネリック薬は先発品を製造販売する場合、先発品と同レベルの品質、有効性、安全性を有するかどうか厳密な審査のもと、それらが先発品と同等であると認定された後発品だけが製造販売承認を得ることができるため、効果に関しては先発薬であるプロシアと後発薬であるジェネリック医薬品に差はないとされています。
AGA治療においてプロペシア(フィナステリド)の考え方
AGA治療において世界中で認可が下り最も効果が認められている薬がプロペシア(フィナステリド)です。しかし、数多ある薄毛症状の中でもAGAにのみ効果がある点や、半年前後の長期間の服用により徐々に効果が実感できる薬でもあるため、薄毛の症状がAGAであることをしっかりと医師が診察し、薬の処方後は毎月客観的にその効果を分析できる医療機関で薬を処方をしてもらう事が重要です。
やはり体質やAGAの進行状況によりプロペシア(フィナステリド)であっても効果を充分に実感できず、他の治療の選択肢を選ぶ必要がある場合があるからです。
その他のAGAの薬やAGAの治療法について詳しくはこちらをご覧ください。
また、プロペシア(フィナステリド)も薬である以上は体調や体の状況により、副作用も発現する可能性が十分にありますので、必ず医師の診察を定期的に受けながら治療を行いましょう。
銀座総合美容クリニックでは「常に患者さん目線でのクリニック運営」「患者満足度のより高いAGAクリニックを目指す」をクリニックの運営理念に掲げ薄毛に悩む患者様と日々真摯に向き合っており、無料カウンセリングを対面・オンラインともに常時承っております。
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